@パワークランクって?
・アメリカで開発販売された、左右独立駆動のクランク。
BBに円柱状アダプターを付ける。
クランクにはワンウェイクラッチが内蔵。
そのクランクをBBアダプターにかぶせて、左右独自に進行方向だけに駆動させる。
(↓左/旧型。右の次の世代から、クラッチ仕様が変更され、クラッチ径も大きくなった)
・わたくしの知る限り、ある企業が一部門としてこのパーツを売り出した、とかではなくて、このパワークランクのみを開発して立ち上げたベンチャー企業。
日本一周から帰ってきたら、サイトは無くなって?いた。
powercranks.com - powercranks リソースおよび情報
開発者Frank紹介のサイトはまだ活きているよう。
Frank Day - PowerCranks Inventor - VeloVeritas
・当時は日本の代理店もあった。わたくしが導入したのは2011年だけど、当時のレートでDURA-ACEよりずっと高くて、十数万円したと記憶している。で、重さは爪リングを押し込んで固定すると通常クランクと同じようになる「デュアルモード」(日本一周に使用した現物)で、、、
フレームよりクランクの方が重いという、、、!
スタートの埼玉から、クラッチが逝ってしまった高知までは、肉抜きデザイン+美しいゴールドが好きで、↓の旧型を装着。
これでも昨今のカーボンフレームより重い。
・種類によっては、ペダル取り付け穴をギザギザのアタッチメント噛み合わせで、クランク長145mm〜180mmまで変えられた。
これは画期的。
(でも、この背面にかますアルミアダプターは加工性の良い柔らかいアルミ材のようで、ペダル軸の雄ネジの硬さに負けてヘタリ出して、、、)
・自分で動画撮って編集すればいいのだけれど、面倒なので、まだサイト上に残っている、真面目に取り組んだ強豪ライダーのリンクでご覧ください。
パワークランク(Power Cranks)を導入!(動画あり!) (なおっきのぶろぐ)
@導入・経緯
・もう当時はレースはやめて和太鼓がメインで、ロードバイクに乗るのは通勤+αとなっていたけど、パワークランクの事を知って体幹を鍛える器具としてマイbikeに導入。1台目に付けて乗ってみて、コレは乗る全てのbikeをコレにしないとわたくしのような鈍は身に付かんな、と、もう一つ新品購入。さらに、絶対マスターしてやる、と手持ちの残りの2台分も海外中古サイトでgetして装着するという。
・一度でも経験した人はイメージできるが、もうそれは別の乗り物。片方のクランクを踏んでも、逆のクランクは上がってこないので、自分の体幹で上げる必要がある。左右を180度位相で回すことは困難で、ケイデンス(回転数)の低い登りや重いギアの方が回しやすく、ケイデンスの上がる平地や軽いギアの方が違和感大。繰り返して、いわば脳レベルで変えていく必要がある。
・ある程度慣れてくると(練習量によるが数週間〜数ヶ月)、今度は通常クランクに戻った時に、下から蹴り上げられているような感覚を覚える。
・さらにマスターすると(練習量によるが数ヶ月〜数年。わたくしは年単位かかった)、通常クランクに乗ってもあまり感覚は変わらなくなる。
ちなみに同じパワー計付きペダルASSIAMO個体で計測したパワーフェーズデータ
(↓ノーマルクランクの、わたくしよりbike歴の長い友人のデータ)
(↓パワークランクのわたくし。同じpower計ペダル個体で計測)
↑もっとも、これはベストバランスの時で。
・トルクをペダリング中に満遍なくかけられるということが、正解なのかどうかは分からない。リズムを持って筋肉を休ませる事をなくしてしまってかえって疲労するのかも。
・さらに、マスターしたからロードレースで勝てるかというと、これまた別の話。あくまでペダリング効率が良くなっただけだと思う。
・正確には前出リンク中の研究結果にもある通り、ペダリング効率がよくなったのではなく、より多くの筋肉を連動させてペダリングできるようになる(ノーマルクランクのペダリング時より、引き足に使う大腿二頭筋や腸腰筋などを連動させて、踏み込む大腿四頭筋等への負担を少なくできる)、というところか?
このパワークランクが究極のペダリング習得に必須なら、全てのチャンピョンが装着しそうなものだが(かなりの有名ロード選手、競輪選手の名がHPには載っていたが)、そうはなってない。ピスト練習、さまざまな毎日の意識的な練習の積み重ねで、パワークランクなど採用しなくても究極のペダリングを体得しているのだろうと思う。
↓採用した2011年夏。
こんなふうに両足を揃えてペダリングもできる。やらんけど。たまに煽り気味のカードライバーを驚かす時にわざとやったりする程度?
↓仲間が撮ってくれたphotoをよく見ると、180度位相でペダリングできていない。
photo by Mr.Mikami
印象的だったのは、わたくしより明らかに能力の高い仲間に、このパワークランクを試してもらって、どお?やってみない?と勧めたら、「こんなのに取り組んでる暇あったら、坂、上ります」。。。
キツい練習から逃げてる己を思い知ったのであった。
でも、皆がやらないからこそ、自分のアイデンティティにしようと。
@インプレ
このマニアックなクランクに関して、インプレもクソもないのだけど、これで日本一周を完遂し終えた過程などを。そもそも、ペダリング改善のための特殊機器で、耐久走で使用するメリットは無い。
新品購入のブツは、以前何度か進行方向にクラッチが滑ったことがあったので、アメリカに送って診てもらったが、特に問題はないと。強烈なトルクをかけるのには向かないらしい。後日わかってきたのは、クラッチ径の大きくなった後期型は、クラッチと接するアダプターが圧入二重構造で、どうもその外側の圧入されたアダプターリングが、トルクに負けて圧入接面で滑っているようだ。
ダンシングはできるが、特殊な上体の支え方を必要とする。今回、日本一周は強いトルクをかけて壊したくなくて、ダンシング、ゼロ! 14000km弱、全てシッティングで。
トラブル(クラッチ)
・日本一周30日目、約2800km走ったところで、左クラッチが壊れてクランクが空転してトルクがかからなくなった。高知での峠へのヒルクライムの最中だった。一旦埼玉に飛行機で帰還して別のに付け替えて、フェリーで徳島まで戻って再開する。
・初めに日本一周に付けて行ったのは、e-bayで買った中古(クラッチ径の小さい前期型)。
その個体は以前一度、通勤で使用中に右側のクラッチが逝ったので、Frankに連絡してアメリカに送ってクラッチを入れ替えてもらった。
すると、新品購入した、クラッチ径が大きくなった型と同じような、大きめのベアリング内ローラー(その分、ローラーの数は減っている。左のは細かいローラーが3本ずつ1セット配置されてる)を持つクラッチになっていた。↓右(左は細かいベアリングの旧型)
一周中に逝ったのは、今度はその細かベアリングの左側。
分解して色々やったけど、ダメだった。
クラッチを送って換装し替えていた右側↓は大丈夫。径が大きくなった型からベアリングが↓のようになったと思っていたけど、これは前の小さいベアリング径のバージョン。
細かいローラーの型は色々トラブルがあって、小さな径の頃からローラーの大きさや数をバージョンアップしていたのだと思われる。
雨中走行のたびに外して錆を取ってディグリーザーで洗浄してオイルを挿していたが。
アダプター側にも錆が移っている。
付け替えたのは、径が大きいこの型(中古)
シルバーのリングをアダプター側の溝に合わせて押し込んで固定すれば、通常クランクと同じようにできる「デュアルモード」。
もちろん、日本一周中は一度も固定したことはない。ただ、もし今度何かあったら対応できるだろうという保険で。
雨走行でも、錆が浮くことはなかった。(↓しかし、径の太くなったこの後期型のアダプターは、一体成型でなく、写真↓のように、筒部分が二重構造。)
トラブル(ペダルアダプター)
・一周中、かなりの期間、ペダルからと思われる異音や違和感に悩まされた。
主に左。頻繁に信号待ちで外す路肩側(左)なので、SPDクリートの消耗か、金属クリートゆえのペダル側のキャッチ部分の摩耗か。どちらも途中で買ったり取り寄せたりして交換したがあまり良くならず。
とうとうペダルを握ってこじると、ガタが感じられるようになった。なんだよ、天下のSHIMANOさんのMTB最高峰XTRも数千km走行程度ででペダル軸にガタが出るのかよ!とキレ気味だったけど、その後、色々原因を探ったら、パワークランク側のクランク長可変パーツの、ペダルをねじ込むメスネジ側がガタあるのだと判明。そこにネジロック系の接着剤つけたら解決。しかし、そのロックも効かなくなって、結局自宅の中古の別のやつから別のを外して送ってもらって交換したら、その後大丈夫になった。
クランクキャップもそうだが、加工性の良い、ほぼ純アルミに近い素材で作られているようで、ペダル側の硬いクロモリ軸に負けて、ガタが出てくるようだ。
結論
日本一周中の機材トラブルと悩みのほとんどは、power-cranksが原因だった。
日本一周bikeのクランクには、パワークランクはお勧めしない。
、、、って、選ぶウマシカいる訳ない。